第138号
6月1日は当院の開院記念日。17年目を迎えます。この間に、乳児が受けるワクチンが格段に増え、ロタウイルス胃腸炎で高度脱水に陥った子や細菌性髄膜炎のような重症感染症をほとんど見なくなりました。一方で、新型インフルエンザ、新型コロナに翻弄され、小児科は感染症と共にあるのだと実感。
病院勤務時代も含めると、守谷で小児診療に携わって30年!昔診ていた子が、立派にお父さんやお母さんになって、お子さんを連れてきてくれるのは、小児科医冥利につきます。今後とも体力の続く限り頑張っていきたいと思います!
日本脳炎ワクチンについて
日本脳炎ウイルスは豚の体内で増殖し、ウイルスに感染した豚の血液を吸った蚊にヒトが刺されることによって感染します。感染しても日本脳炎を発病するのは100~1,000人に1人程度であり、大多数の人は無症状に終わります。
近年の日本では、乳児から高齢者まで含めて全国で年間数人~10人程度の発生状況であり、稀な病気ではあります。しかし、発病した場合、高熱に続いて頭痛、意識障害、けいれん、筋強直、麻痺などが起こり、死亡率は20~40%と高く、生存しても重度の障害を残すことが多い疾患です。
現在、日本脳炎ワクチンは生後6カ月~接種可能ですが、標準接種年齢が3歳~となっており、大多数の人は3歳で1回目、2回目、翌年に追加接種を受けています。3歳未満では3歳以上に比べて接種量が半量であり、十分な効果が得られるのか、2期接種の9歳以降まで抗体量が維持されるのか不安だったことや、1-2年間、日本脳炎ワクチン不足で入手困難だった時期があり、当院では3歳~の接種を基本にしてきました。
しかし、3歳未満は日本脳炎に罹らないかというと、そんなことはありません。2009年以降、3歳未満の日本脳炎患者は全国で3例確認されており、千葉県内で2015年に生後10か月の子が日本脳炎を発症したことを機に、千葉県では生後6カ月からの接種を積極的に進めてきました。
先日、千葉県における3歳未満接種での抗体獲得率等を調べた報告が出ました。それによれば、2回目接種後では、3歳以降の通常量接種では100%の抗体陽性率に対し、半量接種の3歳未満は92.5%とやや低かったものの、3回目接種後には3歳未満でも、100%の抗体陽性率になっており、2‐3年間抗体価は維持されていました。
この報告でもう一つインパクトがあったのは、日本脳炎ワクチンを未接種なのに抗体陽性者が9.2%もいたことでした。この子達は幸い発病しなかったけれど、感染はしていたということです。ただし、豚の日本脳炎ウイルス保有率というのは地域によって差があり、九州や四国では100%の県が多く、茨城県では0-20%程度と低いです。隣ながら千葉県では昨年秋の調査では100%であり、報告の対象地域は豚の多い場所だったという背景は、守谷と異なりますが。
これらのことを考えると、3歳未満でも日本脳炎ワクチンを接種した方が安全と思われます。接種ご希望の方はご相談下さい。Web予約からも3歳未満の日本脳炎ワクチン予約が取れるようになりました。
夜尿症の治療
夜間におねしょのある子は7歳で10%、10歳で5%程度といわれています。夜尿症は、①夜中睡眠から覚醒しにくい体質、②夜間、膀胱に尿をためる能力が低い、③夜間の尿生成量が多い、その他の原因がからみあって起きています。年々減ってきている場合は経過をみてもよいですが、小学生でほとんど毎日のように夜尿がある場合は、治療介入した方が早くおねしょから卒業できます。寒い冬よりも夏場の方が治療開始するには楽です。
生活指導や夜尿日誌で改善しない場合は、薬物療法やアラーム療法を行っています。お悩みの方はご相談下さい。
感染症流行状況
ゴールデンウィーク明けからインフルエンザやコロナ、RSウイルス等がそれぞれ週に数人出ていますが、大きな流行にはなっていません。一部の保育園で手足口病が流行していましたが、5月下旬には下火に。最近は、原因がはっきりしないまま熱や咳が続いている子や胃腸炎の子が多くいます。
今月の一冊
「2ひきのカエル
そのぼうきれ、どうすんだ?」
作・絵:クリス・ウォーメル
訳:はたこうしろう
もりの大きな池にいる2匹のカエル。1ぴきのカエルは棒を1本持っている。もうかたほうのカエルが「どうして棒を持ってるの?」と話している間に、とんでもないことが…
カエルのかけあいが面白い絵本です。(T.K.)
今月の予定
6月 1日(木) 黒内小内科健診
もりや幼保園内科健診
15日(木) 守谷市3歳5か月児健診
29日(木) 常総市3歳児健診
★コロナワクチン接種のため
(金) 17:00受付終了(月火水は17:30まで)