第150号
開院17年になりました。それ以前には守谷第一病院に13年勤務していましたので、守谷に来て30年!あっという間だったような気もしますが、親子2代にわたって通院してくださるご家族も多くなってきたと感じるこの頃です。
これからも地域のお子さん達が健やかに成長されるよう、見守っていきたいと思います。
発達障害を疑う前に
文部科学省の調査によると、2006年の時点では、発達障害児の数は全国で7,000人足らずでしたが、14年後の2020年には9万人を超えたといわれています。14年間で14倍にも増えた計算になります。本当にこんなに増えたのでしょうか?
自閉症、ADHD、学習障害といった言葉が教育現場、さらには一般の人々にも広く浸透し、少し他の子と違う・集団行動が苦手・落ち着きがない・かんしゃくを起こしやすいといった子達が、「発達障害」とみなされる風潮ができてしまった一面もあるかと思います。
脳科学を研究し子供の発達に長年向き合ってきた小児科医・成田奈緒子先生の著書『「発達障害」と間違われる子どもたち』を読んだことのある方もいるかもしれませんが、この中で成田先生は「発達障害もどき」の子も実は多いのだと書かれています。子どもの脳は常に成長しており、今の状態がすべてではない、変化しうるもの。一見「発達障害」を疑われる症状が見られる子も「生活改善」でそれら症状が目立たなくなることがあると、何人かの例をあげながら述べられています。
脳の発達には段階があり、まず一番に育てるべきは「寝る・食べる・動く」という生きるために欠かせない働きをする“からだの脳”です。この土台がしっかりできていないと、言葉や知識を蓄える脳・こころの脳もうまく成長できずアンバランスな状態になってしまいます。
お子さんは十分よい睡眠をとっていますか? 朝すっきりと起きてしっかりご飯を食べていますか?
「生活改善」に欠かせないのが、
- 朝日を浴びる:朝起きたら太陽の刺激を目から入れて体内時計を調整します。
- 十分に眠る:早く寝るためには、まず早く起きることが先決。昼寝は長くとり過ぎず、朝7時前までに起こすことから始めましょう。
- 規則正しい時間に食べる
これら規則正しい生活リズムの積み重ねこそが、子どもの脳を作る刺激となるのです。お子さんの様子が何か変だと思った時、まずは親子共に早く起きて、夜は十分に眠る生活をしてみましょう!
日本脳炎ワクチンは生後6ヶ月から接種できます
日本脳炎ウイルスは豚の体内で増殖し、ウイルスに感染した豚の血液を吸った蚊にヒトが刺されることによって感染します。感染しても日本脳炎を発病するのは100~1,000人に1人程度であり、大多数の人は無症状に終わります。
近年の日本では、乳児から高齢者まで含めて全国で年間数人~10人程度の発生状況であり、稀な病気ではあります。しかし、発病した場合、高熱に続いて頭痛、意識障害、けいれん、筋強直、麻痺などが起こり、死亡率は20~40%と高く、生存しても重度の障害を残すことが多い疾患です。
現在、日本脳炎ワクチンは標準接種年齢が3歳となっていますが、法律では生後6カ月~接種可能です。2015年に生後10か月の子が日本脳炎を発症したことを機に、千葉県では生後6カ月からの接種を積極的に進めてきました。3歳未満では接種量が半量になりますが、きちんと抗体が獲得されることが報告されています。
全国の豚の日本脳炎ウイルス抗体保有状況が定期的に調査されています。昔から九州・四国など西日本で抗体保有率が高く、茨城県では0-20%程度と低かったのですが、昨年末の調査では調べた豚10頭すべてが抗体を保有しており、県内でも日本脳炎ウイルスは身近にいると推察されます。蚊に刺されたからといって、すぐに日本脳炎を心配する必要はありませんが、万が一のことを考えると3歳未満でも接種がお勧めです。
感染症流行状況
溶連菌感染症の流行が続いています。熱が出ているお子さんは沢山いますが、インフルエンザはほとんどいません。コロナはたまに出る程度。RSウイルスもゴールデンウイーク以降はそれほど多くはなく、いわゆる風邪症状のお子さんが多い状況です。手足口病が出始めました。
今月の一冊
「うまれたてのくもくん」
さく・え:天野みえ
しろくて、ふわふわのくもくん。空から見える動物や花などの形になって遊んでいると、同じくもくんがやってきて、「ついておいで!」といろいろな形のくもを教えてくれます。空を見上げるのが楽しくなる絵本です。(T.K.)
今月の予定&お知らせ
6月 13日(木) 守谷市3歳児健診